大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(ネ)1946号 判決

ところで被控訴人は大倉電気株式会社に対し、昭和三六年八月二四日付賃貸借契約に基づき本件建物の三ないし五階を、毎月末日限りその翌月分の賃料金五七万三八〇〇円を支払うこととして賃貸し、次いで同四三年七月一日付で、右建物の一、二階を賃料金三九万六〇〇〇円を右と同様の方法により支払う約束で賃貸していることは、控訴人の明らかに争わないところであるから自白したものとみなすべきところ、本件売買契約の内容、殊に売買代金は契約成立と同時に手付金五〇〇万円を支払い、内金五四七九万二八八〇円は昭和四四年七月一日までに、控訴人において本件土地建物を明け渡し、かつすべての負担を抹消した上所有権移転登記手続をすると引き換えに支払うこととなつていること、右大倉電気の賃料は昭和四四年七月一日から被控訴人において取得する旨約定されていること、前認定のように買主の地位を取得した被控訴人側には債務不履行を責むべき点のないこと、それに上来説示したところを綜合して考察すると、被控訴人は少くとも控訴人との間では、本件売買契約の効力として右同日から第三債務者である右大倉電気に対する賃貸人としての地位を承継し、右大倉電気から右賃料を徴収する権限を有するにいたつたものということができる。本件においてすでに契約と同時に本件土地建物の所有権が買主に移転したものといいうべきかはなお検討を要するものがあり、現に被控訴人のため所有権移転登記のなされていないことは弁論の全趣旨から明らかであるから、大倉電気において認めない限り、被控訴人は本件建物の所有権取得を大倉電気に対抗できず、従つてまた借家法上当然に賃貸借上の貸主の地位を承継したものということはできないから、被控訴人が直接大倉電気との関係で、賃料徴収の権限を取得し、かつ行使しうるかは問題であるが、このことと被控訴人が控訴人との間で売買契約上この権限を有するとすることはなんら矛盾するものではない。

しかるに控訴人はこれを争つているから、控訴人に対し右賃料債権の取立その他一切の処分を禁止し、第三債務者である大倉電気に対して右債務の支払を禁止した原決定は相当である。なお控訴人は債権処分禁止の仮処分において、第三債務者に対し債務の支払を禁止する処分をすることは違法であるというけれども、右仮処分の目的を達成するためには、債務者に取立禁止を命ずるのみならず、第三債務者の支払を阻止しておく必要があるものというべく、このことは第三債務者にかくべつ不利益を強いるものではなく、第三債務者は欲すれば民法四九四条の趣旨により供託によつてその責を免れることができると解しうるから、この種仮処分命令はこれとほとんど同様の機能を有する債権仮差押に関する規定を準用し、右仮処分命令の執行方法として第三債務者に支払禁止を命じてもこれを違法とすることはできない。

(浅沼 岡本 田畑)

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